【ペット可】イデアを塗れ 201
「イデアを塗れ」この物件に訪れた時に、浮かんだ言葉である。
梁や柱のない、14帖のリビング。さながら「箱」である。
自由と不自由は隣り合わせだと、テレビでとある俳優が言っていた。
校則とか、緩いルールで縛られていた方が楽なのだと。確かにそう思った。
ここに住むということは、この箱の中で暮らすということだ。
空っぽのこの箱を、どうしてやろうか。
今、私は自由であるがゆえに、不自由を感じている。
だってー、14帖もあったら、買いたかったソファーとか、壁に飾りたかったビカクシダとか、もう余裕で収まるし。
真ん中を棚で仕切ってワークスペースとくつろぐスペースに分けたりとか、
窓がない壁にでかでかとプロジェクター映してトレインスポッティング流したりとか、
欲しいものややりたいことが溢れてもうどうしようもない。
気に入ったのは、このちょこんとしたバルコニー。
白いパイプで縁取られた、コンパクトさに惚れてしまった。
周りは建物に囲まれてはいるけど、目線はさほど気にならないし、部屋が暗い印象もない。
そして、陽が差し込んでくる時間帯もある。
バルコニーに出て上を見れば、この空。広すぎない空。
ああ、自分は東京にいる。
冷凍都市に住む妄想人類とは、この瞬間は私のことだ。はは。
建具類を見たら、すべて白で塗装されていた。
Spotifyではなく、アナログレコードを聴いているような、クラシカルな塗装の質感。
私はこういうのが好きだと思うし、こういうのがかっこいいと思ってる。
ベッドルームは約5.0帖。こちらも二面採光の角部屋だ。明るい。
正直、クローゼットはそこまで広くないが、普段はあっちの箱で過ごすから、
こっちの箱はいっそのことベッド+収納部屋にしてしまおう。
収まらなかったものたちが、飾られるものとなる。
三軒茶屋から徒歩8分、世田谷郵便局や世田谷警察署あたりから少し入った、落ち着いた雰囲気の閑静な住宅街。
外観、丸い小窓がかわいいじゃん。
ここは宇宙、日本、世田谷。冷凍都市ではない。氷を溶かしていくような、前を向いた暮らしを送ろう。
私は今、自由だ。
♪今日のBGM:ZAZEN BOYS / はあとぶれいく